「私が悪いから」
モラハラ被害にあっている方から、よく聞く言葉のひとつです。
たとえば、相手から強い口調で責められたとき
小さな意見の食い違いが起きたとき
「いやだ」と自分の気持ちを伝えただけなのに、後から強い罪悪感に襲われてしまう
もしくは、「いやだ」と言うこともできない
気がつけば、
「私さえ我慢すれば」
「私が悪いから仕方ない」
と、自分を責めて関係を維持しようとする。
そんなパターンに苦しんでいませんか?
でも、それは本当に「あなたが悪いから」なのでしょうか。
なぜモラハラ被害者は「私が悪いから」と思い込んでしまうのか
モラハラの大きな特徴は、モラハラをする側が巧妙に「責任」をすり替えていく点にあります。
「お前のせいだ」
「だからお前はダメなんだ」
こうした言葉を繰り返し浴び続けることで、被害者はやがて、
「自分が悪いに違いない」
と信じ込むようになります。
モラハラをする側は、100%かはわかりませんが、
割と本気で「自分が正しい」と思い込んでいます。
その自信満々に言い切る姿に、言われたほうは、
「たしかにそうかもしれない」
「自分にも悪いところはある」
「この人に反論したところで、話を聞いてくれないだろう」
と思うようになります。
自責的な人や、自分の感情を抑え込みやすい人ほど、
なにか言われても口をつぐんで、相手のいうことを聞き入れやすい傾向にあります。
そしてこのような従順な姿勢が、モラハラをする側の自信をさらに強め、
モラハラ行為をエスカレートさせる悪循環を生んでしまうのです。
もともと自分を抑え込みやすい人は、エスカレートした相手に対してさらに萎縮し、
「私が悪いから」
という意識を強めていきます。
「私が悪いから」の裏にある心理
でもじつは、「私が悪いから」と思い込むことには、無意識のメリット(心理的利得)があります。
それは、「自分が悪い」と思えば、
いまの関係を維持できる
というメリットです。
もし相手が悪いと認めてしまえば、
「見捨てられるかもしれない」
「関係が終わってしまうかもしれない」
「ひとりでは生きていけない」
という恐怖が襲ってきます。
あとよくあるのは、結婚している場合、
- 収入が得られなくなって、自分でお金を稼がないといけなくなる
- 離婚することになったら世間体が悪い
- 子どもをひとりで育てていくのは不安
などの不安もあると思います。
その不安に直面するくらいなら、自分が悪いことにしてでも関係を維持しようとする。
この視点から考えると、モラハラを受けている人は、ある意味、
自分を差し出すことで、モラハラする側から何かしらの恩恵を受けている
ととらえることもできます。
耳の痛い話かもしれませんが、決してあなたを責めているわけではありません。
しかし、その結果として自分を責め続け、自己肯定感は奪われ、ますます支配から抜け出せなくなってしまいます。
モラハラを受けやすい人の特徴
モラハラを受けやすい人は、自分の感情を抑え込み、自己否定をしやすい人が多いです。
さらに、そのような特徴を持つ人の傾向としては、幼少期の体験として、
- 親から、感情を聞いてもらえず、一方的に責められることが多かった
- 親からの暴言や暴力を繰り返し受けていた
- 親がいつも不機嫌だった
- 親が他責的だった
- 親がモラハラをしていた
こういった経験ある方が多いです。
この場合、
「いうこと聞いていないと見捨てられる」
「自分さえ我慢すればなんとかなる」
このような思考回路を、幼少期から身に付けていることは容易に想像できます。
つまり、「自分のせいにすること」は、幼い頃から身につけてきた生き残りの知恵でもあるのです。
モラハラから抜け出すために必要な視点
事実と解釈を分ける
「私が悪いから」と感じるとき、まず大切なのは「事実と解釈を分けて見る」ことです。
たとえば相手が怒鳴った事実は「相手が怒鳴った」というだけ。
そこに「私が悪いから怒鳴られた」という解釈を加えているのは、あなた自身の心のクセです。
大切なのは、ありのままの事実を見ることです。
境界線を持つ
もうひとつ大切なのは、自分と相手の間に心理的な「境界線」を持つことです。
相手の感情(不機嫌・怒り)と、自分の存在価値は別物です。
「相手が怒っているのは相手の問題。私は私の感情を大切にしていい」
そう思うことが大切です。
自分と人との間に境界線を持っていないと、
「相手が怒っている」=「自分が悪い」
という思考になってしまいます。
ぶっちゃけ、モラハラする側は、怒りたくて怒っているのです。
なぜなら、怒って強気に出れば、
あなたがおとなしくなることがわかっているからです
あなたがいうことを聞くのがわかっているからです
あなたを思い通りにできることがわかっているからです
実際に、自分に改善すべきところがあるなら、そこを認めて改めていくのは人として大切なことです。
自分の非を認めて謝って、行動を改めて、それでも相手が怒り続けるなら、
それは「相手の問題」です。
あなたが解決すべき問題ではありませんし、解決することもできません。
「相手の問題は相手が解決すること。私は私に集中する」
これが心理学でいう、境界線を持つということです。
「私が悪いから」をやめる
「私が悪い」と思い込んでしまうのは、あなたの心の弱さと考えてしまうかもしれませんが、
どちらかというと、「生き方・人との関わり方のクセ」みたいなものです。
それは長い時間をかけて身につけた、生きるための心のパターンです。
けれど、そのパターンで自分を縛り続ける必要はありません。
「縛られ続ける」ではなく、「縛り続ける」です。
自分を縛っているのは、他でもないあなた自身です。
あなたが本来持っている力や尊厳は、必ず取り戻すことができます。
どうか覚えていてください。
あなたの存在そのものは、決して「悪いもの」ではないということを。
この記事が、モラハラの苦しみの中で「私が悪い」と自分を責めてきたあなたにとって、小さな気づきのきっかけになれば幸いです。
「どうしても怖い」
「ひとりでは問題に向き合いきれない」
「頭ではわかったけど、行動に移せない」
と感じて、「私が悪いから」と自分を責め続けているなら、それはもう限界のサインかもしれません。
そんなときは、心理セラピーをご活用ください。
あなたの心の声を一緒に整理していくことで、本来のあなたらしさを取り戻すお手伝いをさせていただきます。