この人は素晴らしい人だろう
あの人は悪い人に違いない
私はどうせ失敗するはず
私は愛されないに決まっている
何かを思い込んだら、それを支持するものや情報が目につくようになることってありませんか?
今回は私たちの思考や判断に影響を及ぼす「確証バイアス」についてのお話をします。
人はなぜ自分が見たいものしか見ないのか【確証バイアスとは】
私たちは日常的に多くの判断を行っています。
そして自分では客観的な判断を行っていると思っていても、人それぞれに異なる判断を行います。
こういった私たちの思考や判断に大きな影響を及ぼすのが、
「確証バイアス」
というものです。
確証バイアスとは、人が自分の信念や期待に合致する情報を優先して探し、反対の情報を無視または軽視する傾向のことです。
人はそもそも自分に都合がよく
見たいものだけを見て
聞きたいものだけを聞いて
受け入れたいものだけを受け取る
という習性があるのです。
確証バイアスの例
ある女性は、「自分は夫に愛されていない」と考えていました。
「愛されていない」と考えるようになってからというもの、この女性は夫のあらゆる行動が目につくようになりました。
- 仕事の帰りが遅い →私に会いたくないから帰りが遅いんだ
- 作ってあげた料理においしいと言わない →私が料理を作ったことに感謝してないんだ
- お願いしたことを忘れていた →私のことを軽く見ているからお願いを忘れたんだ
- 休日に朝遅くまで寝ている →私と一緒に過ごしたいと思ってないから寝てるんだ
このような一つ一つの行動を見ては、
ああやっぱり私は愛されていない
という考えを強めていきました。
「自分は夫に愛されていない」という考えは、事実かもしれないし、事実でないかもしれません。
しかし、人はまず自分なりの結論を持っていて、それを支持するような証拠を集めていく、という思考の流れをたどることが非常に多いです。
多いというか、その場合がほとんどだと言っても過言ではないでしょう。
では、人はなぜ結論ありきで、考えてしまうことが多いのでしょうか?
確証バイアスの原因
人が結論ありきで考えてしまう原因は、大きく分けて2つあります。それは、
①安心したいから
②ラクしたいから
安心したいから
人の行動は基本的に、「不快を避けて、快を得ようとする」という原則があります。
自分の考えは正しい
自分の判断は間違っていない
と思うことができれば、安心することができます。
逆に、
自分の考えは正しくないかもしれない
自分の判断は間違っているかもしれない
をいう思い抱えたまま、過ごすことは非常に不安で不快です。
そのため、その不安や不快感を感じなくてすむように、自分の判断を支持するような証拠を集めることで安心を得ようとするのです。
ラクしたいから
人間の脳は基本的に面倒くさがりで、省エネが大好きです。
なぜか?
それは、脳の目的は生き延びることだからです。
生き延びるためには無駄なエネルギー(カロリー)は使わないに越したことはありません。
しかし、あらゆる事実や材料を集めて、合理的な正しい判断やよい判断をすることは、現実的には難しいです。
そのため、これまで生きてきた経験から、自分にとって都合が良かった、役に立った考えや法則にもとづいて、
なるべく早く
無駄なエネルギーを使わず
ラクに
判断を下そうとするのです。
「このやり方で今まで生きてこられたのだからオッケー」というのが脳の判断基準というわけです。
私たちは確証バイアスによって、安心できて、ラクに判断を下すことができますが、それでよいのでしょうか?
確証バイアスの悪影響
私たちはそれぞれに信念や価値観、考え方を持っています。
その信念が人生にとってプラスになるものならよいでしょう。
たとえば、「人生は楽しいものだ」という考えを持った人は、確証バイアスによって、日常生活の中でも楽しいことを見つけやすくなるでしょうし、その分、生活の満足度も高くなるでしょう。
ご機嫌で楽しそうにしていることが多くなれば、人から好かれる可能性も高く、人間関係も自然とよくなっていくでしょう。
一方で、人生にとってマイナスになる信念や考えを持っているとしたらどうでしょう?
たとえば、「男は無能で使えない」という考えを持った人は、確証バイアスによって、職場でも男性社員のできないことやミスに目がつきやすいでしょうし、家庭でも夫や息子の苦手なことや失敗などに意識が向きやすくなるでしょう。
そのような意識で男性を見ていれば、当然それは相手にも伝わるので、そのうち煙たがられるようになり、「関わるのはやめておこう」と思われて、ますます協力も得られにくくなり、「男は無能で使えない」という考えを強化してくことになるかもしれません。
確証バイアスの悪影響はここにあります。
確証バイアスによって、信念や考えが正しいかどうかとは関係なく、その証拠を優先して集めていくため、
信念や価値観、考えがネガティブなものだった場合、人生が良くない方向に進み続けてしまう可能性が高くなるのです。
特に愛着障害やアダルトチルドレンと呼ばれる、不適切な養育を受けてきた人たちは、人間関係や生活の質を悪化させるような、非機能的な信念や価値観、考え方を多く持っていることが多いです。
そのため、人生が困難なものになり、生きづらさを抱えやすいのです。
- 人生は苦しいものだ
- 人は怖い
- 人は信じられない
- 自分は生きる価値がない
- 自分は頭が悪い
- 男は自分を傷つける
- 男は無能で使えない
- 女は自分を見捨てる
- 女は自分を利用する
心当たりはありませんか?
確証バイアスの罠にかからないために
確証バイアスの罠にかからないためにどうすればいいのか?
という話ですが、
まずは確証バイアスの存在を知ること
これが大事です。
確証バイアスは誰にでもあるものだということを知り、
自分は自分が見たいものを見ている
目の前の現実を見ているようで見ていない
ということを心にとめておくことがバイアスにとらわれない第一歩になります。
そして次に、
人と話すこと
人間は他者との関わりが減っていくと、自分の中の思い込みや想像が膨らんでいきます。
つまり、視野が狭くなるんです。
狭くなった視野に自分で気づくことは非常に難しいので、客観的な視点で物事を見ることができる他者に話を聞いてもらう、アドバイスをもらうというのは有効だと思います。
最後に、頭では間違っているとわかっていても、どうしても拭い去ることができない考え方や思い、感情や感覚がある場合は、トラウマなど、過去の強い感情を伴った経験が影響している場合が多いです。
そういった場合は、心理セラピーやカウンセリングなどでその影響を緩和させていくことが有効です。
どうしても拭い去れない思いにお困りの方はご相談くださいね。
余談
最近、車を買いました。納車はまだ先なのですが。
車のグレードを選ぶとき、色々考えて3つあるグレードのうち、上から2番目のグレードを選んだんですよ。
色々考えて、最高グレードじゃなくてええなと。
色々考えて、最高の装備は必要ないなと。
契約して以降、街中で同じ車種の車が、めちゃくちゃ目に付くようになりました。
さらに、どのグレードなのかめちゃめちゃ気になって、
上から2番目のグレードの車を見つけるたびに、
やっぱり2番目のグレードでよかったよな、うん、よかったよかった
と自分を納得させようとしている自分がいます。
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