暴言、言葉による虐待を受けていた人や、親が不機嫌なときに物を投げる、叩きつける、ドアをバタンと強く閉めるなどが日常的にある環境で育った人は、音に敏感であることが多いです。
そのため、
- 職場などで周囲の音が気になって、自分のやりたいことに集中できない
- 子どもが騒いでいると気になってしまい、異様にイライラする
といった悩みを抱えやすいです。
福井大学の友田明美先生の研究によると、言葉による虐待を受けてきた人の脳を画像診断したところ、虐待を受けていない人と比べて、聴覚を司る脳の部位である聴覚野の容積が、有意に増加していることが報告されています。
脳は体の成長とともに大きくなっていきますが、ある時期から「刈り込み」といわれる機能によって、不要な脳神経のつながりは切られ、必要な脳神経回路だけが残されていき、効率的な脳神経回路が構築されていきます。
しかし、暴言や音などによる虐待を受けていた人たちでは、聴覚野の「刈り込み」が適切に行われず、脳神経が必要以上に残されたままになってしまいます。
そのため、人の声や物音が怖かったり、逆にイライラしてしまう、といった反応が起こり、日常的にストレスを抱えやすくなります。
つまり、聴覚が過敏であることは、幼少期のトラウマ体験による脳の後遺症といえます。
トラウマは自分ひとりで解決、克服することは難しいです。
なぜなら、トラウマは原始的な脳の部位である大脳辺縁系に刻まれた強い恐怖の感情・感覚を伴った体験の記憶だからです。
大脳辺縁系は、感情・感覚と体験を結びつけることによって、生き延びるために必要な記憶を残していく機能を持っています。
過去のトラウマ体験に結びつくような視覚情報、音声、体感覚を察知すると、一瞬にして過去の感覚を呼び起こし、恐怖の対象を徹底的に避けようとします。
大脳辺縁系には時間の概念がないので、いま目の前で起こっていることを、過去に起こった体験と結びつけてしまいます。
その結果、過去のトラウマ体験が「いま、目の前で」起こっているかのような感覚に陥ります。
これがフラッシュバックやパニックといった状態です。
では、トラウマ体験をした人は、一生トラウマを抱えたまま生きなければならないかというと、そんなことはありません。
トラウマを解決するためには、トラウマ体験と似た状況になったときに、大脳辺縁系が誤作動を起こさないようにしてあげればよいのです。
そこで有効になってくるのが、心理セラピーです。
心理セラピーでは、「大脳辺縁系に時間の概念がない」という特性を逆に利用して、過去のトラウマ体験を「終わらせる」ということを行います。
トラウマ経験者というのは、死ぬほど怖い思いをしたときに、
自分ひとりでなんとかするしかなかった人
なんとかすることができなかった人
絶望するしかなかった人
いうなれば、「助けてもらえなかった人」なのです。
心理セラピーを通して、「助けてもらう」ということを体感し、大脳辺縁系に刻まれたトラウマの恐怖を安心感に書き換えることによって、トラウマ体験を「終わらせる」ことができます。
トラウマを解決するということは、「過去の助けてもらえなかった自分」を助けてあげるということを意味します。
ぜひ自分をあきらめないでほしいと思います。
トラウマは解決できます。
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